2021.10.19
第38回 製材機に入らない! 木挽き職人が切り出したスギの1枚板
青梅市の山林から来た直径1mの大スギ。板にするにも大きすぎて製材機械に収まらず…
マテリアル販売事業部・吉田に聞きました。
丸太のとき、根元側の太い方(元口)で直径1mくらいでした。東京の木ではかなり大きい方ですよ。
―樹齢どれくらいなんですか?
120年でした。
―丸太の状態で買ったんですね。
そう。長さが4.4mある大きな丸太なんですが、見て、即、「買います!」と。
―何に使おうと思ったんですか?
幅が広いところで90cm弱あるんですよ。
これは天板でしょう。天板に挽きたいなと思いました。
で、製材所さんにお願いしたんですけど、持ってる製材機だと80cmまでしか挽けないそうで。80cm以上だと機械に付いている刃の上限を超えちゃうんですよ。
―どうしたんですか?
木挽き(こびき)職人に依頼しました。
―木挽きとはどういう仕事なんですか?
大鋸(おおが)と呼ばれる大きいノコギリで製材をする職人さんです。
木挽き職人は日本でもいまはほとんどいなくなったそうですが、じつは東京にいらっしゃって、その方にお願いしました。
―これもノコギリで挽いたんですか?
これはチェーンソーで。
製材所の一角をお借りして挽いていただきました。
大工さんと同じで、墨付けして、それに沿って挽いて行くんですよ。
というと簡単に聞こえますが、こんな大きな木をまっすぐ挽くって、相当ですよ…ふつうできないですよね。
―そうですね…
で、どう挽くかというと、「目を出す」と話していました。
―目を出す?
年輪のことなんですよ。
まず、元口の年輪を数えて印を付けて、次に末口(丸太の細い方)の年輪を数えて印を付けて…それに合わせて墨を付けて、挽いて行くんです。
元口と末口で年輪の数が同じになる板を取るんですね。
乾燥する過程での反りを考えると、そうするのがいいそうですよ。
―面白いですね。
あとこの木、丸太の状態で見たときに1箇所、ボコっと膨らんでるところがあったんです。何らかの傷があったのを修復したところだと思うんですけど、それが実際に内部でどれくらいシミになっているのかは挽いてみないと分からない。それが心配だったんですが…
木挽きさんは、木の中の状態を音で確認するんですよ。
丸太の周りを石で軽く叩きながら回って…、ちょっと音が変だね、とか話してました。
でも、自分で思ったほどだめじゃなかった。綺麗な板が取れました。
―全部で何枚あるんですか?
4枚ありますよ。
■素材データ
サイズ:長さ:2800mm、幅:(末口)620mm〜、(元)800mm〜、厚み:75mm
状態:樹皮剥き、未乾燥
樹種:スギ
伐採時期:2020年12月
重量:約100kg
(取材後記)
木挽き職人。機会があったら、直接お会いしてお話を伺いたいと思いました。「木を読むー江戸木挽き、感嘆の技」という本が参考になるようです(木田)。
この日記を書いた人
木田 正人
木田 正人
1966年生まれ。青森県弘前市出身。日本大学農獣医学部卒。雑誌記者など出版界勤務後、「人のため、地球のための仕事」をしたいと思い、林業を志す。東京チェンソーズ設立当初から森林整備と広報を担当。