「東京チェンソーズのまるごと山開きvol.3 森のパラダイムシフト」レポート

2025年6月13日(金)に行われた、「東京チェンソーズのまるごと山開きvol.3 森のパラダイムシフト」。
”森のヘンテコ素材”の見学や社有林の案内、町田市にある簗田寺の副住職・齋藤絋良さんをゲストにお招きしてのトーク「森と信仰」など、内容盛り沢山に開催しました。

今回は都合が付かなかった方や、「山開き」って何? という方もどうぞご覧ください!

【開催概要】
日程 :2025年6月13日(金)
場所 :東京チェンソーズ社有林、素材倉庫等(東京都檜原村)

【内容】
・”森のヘンテコ素材”見学
・社有林案内
・トークイベント「森と信仰」&坐禅会
(東向山簗田寺 齋藤 紘良さん×東京チェンソーズ 吉田尚樹)
・懇親会(希望者)

新たな木の価値を創造する

 ”森のヘンテコ素材”の展示が行われる会場へ…

一昨年(2023年)にスタートした「東京チェンソーズのまるごと山開き」。3回目の今回はサブタイトルを「森のパラダイムシフト」と題して開催しました。

参加したのは、デザイナー、アパレル、造園、おもちゃ、大手サービス業のサステナブル担当、ダンサーなど、さまざまな業種の27社55人。

受付の後、最初のプログラムである”森のヘンテコ素材”見学の会場である素材倉庫へ移動しました。

参加の動機を聞いてみると、

「最近一緒に仕事をするチェンソーズのことが、ちょっと気になったので来ました」

「今日はとにかく沢山の人と出会いたいと思っています」

「自社の木質化を進めるために、東京の事例を学びたい」

「精油に興味があって来ました」

「どんなレアな素材があるか見に来ました」

「林業を活かしたまちづくりをしたいと思っており、今日は視察です」

などなど。

初めに吉田がイベント趣旨を説明しスタート

中にはこんなお話をする方も。

「これまでもチェンソーズさんとはお付き合いさせてきましたが、今回のイベントを通し、改めてどんな素材があるのかなと思ってます。新しい企画をつくるためのきっかけとしたいですね。あと、新しいスタッフが入ってきたのでしっかり森のことも学ぶ機会にさせていただいています」。

木や森に対するこれまでの想いが逆転し、新たな価値観を創造するきっかけとなる1日になればと思っています。

”森のヘンテコ素材”を見学

当日、展示した”森のヘンテコ素材”をいくつか紹介します。

お寺から伐り出したイチョウ。苔むした丸太が新たな生態系を育んでいます(笑)

中が腐り穴が開いてしまったスギ。中をのぞくと向こう側までしっかり見えます

こちらも穴あきのスギ。やはり中が気になります

「木の根っこをこんなにまじまじとみることはない」と参加者も興味津々

”森のヘンテコ素材”とは一般的な建築に使えないことから、大抵であれば捨てられてしまう素材のことです。

それを参加者で囲み、まずは面白がる。

その過程で、素材のうちに潜んでいた価値に気づき、新たな活用アイデアが生まれてくるのかもしれません。

実際に歩くと、森の「かたち」がみえてくる

ヘンテコ素材を楽しんだ後は、東京チェンソーズの社有林へ。まずは森の入り口から、檜原村の山を眺めます。

森の入り口から檜原の山を臨む

檜原村の山は1950年代を中心に人が植え、育ててきたスギやヒノキからなる人工林がほとんどです。

初めのうちは下刈りや枝打ちなど、人がきちんと整備していたところが多いのですが、次第に村の外へ仕事を求めて出るようになり、今では山に入る人はほとんどいなくなってしまったそうです。

「今、僕たちは70年前に植えられた森を先人たちから授かっています。これをこの先どういうものにしていくのかを考えなくてはならない。でも多分僕たちだけじゃ考えられないと思うんですよ。今日来てくださっている皆さんと一緒に考えたいと思っています」

吉田のそんな想いを聞いた後、6つのグループに分かれて社有林を歩きます。案内するのはきこりとして、あるいは営業、広報の担当として、新たな木の価値を生み出し提供する社員たち。各々の目線から森を語ります。

その中の1人、きこりとして日常的に山の現場で仕事する木田俊樹は、

「僕は普段、現場で木を伐っています。なので、山をどう見るかということや、どうして木がこうして植えられているのかなど現場目線でお伝えできればと思います」と話し、案内をスタート。

本物のきこりとお話する機会はなかなかないことから、皆さん、興味津々

「山ってぱっと見ると全部同じ緑に感じるけれど、よく見ると違う緑なんですよ。谷っぽいとこにはスギが植わっていて、尾根筋にはヒノキが植わっているんです。」

確かに、ミクロな視点で木を観察してから遠くの森を見ると、より解像度が上がった気がして面白く感じます。

「なんで尾根筋にヒノキ植えるのかっていうと…乾燥に強いからなんですよね」

「山では、谷の方に水が集まりやすい。そういう所にはスギを植えるんです。」

こんな感じで、木田俊樹の話は止まりません(笑)

他のグループも覗いてみました。

自ら作った作業道を歩き、山の作業を説明

元・海の男が森の役割を話す

森を整備することと人の暮らしの繋がりについて話す

「道を作ることで、いろいろな人が入りやすい森になる」

森の役割、森と人との関わりなど話す

案内人によって多少話すことは違ったと思いますが、スタッフそれぞれの山と対峙する想いが伝えられたはずです。

イベント終了後、参加者からこのような嬉しい声をいただきました。

「山が本当に好きな人が、山について語るとき、その愛はきっと、聞き手に伝わると思います。そういう地味な対話の積み重ねが変化を呼んでくれる、引き寄せてくれるのかなぁと思います」

森の中で坐禅も!トークテーマは「森と信仰」

社有林を歩いたあとはウッドデッキを利用した特設ステージ(!)にて、東向山簗田寺の副住職を務める齋藤紘良さんと東京チェンソーズ 吉田尚樹によるトークイベントを開催しました。

東向山簗田寺は、寛永6年(1629年)に建立された東京都町田市にある、森と湧き水に恵まれたお寺です。

副住職の齋藤紘良さんは、「しぜんの国保育園」をはじめとした保育事業・学童事業等を運営する社会福祉法人の理事長としての顔、さらには楽曲制作やライブ、イベント運営も行う音楽アーティストとしての顔も持ち合わせています。
お寺のある町田市の谷戸と呼ばれる地域の一つ、忠生の土地の歴史や特色を知り、体験する活動の中で、今後500年続くコモンズを設計しようとするプロジェクト「YATOプロジェクト」を立ち上げるなど、精力的な地域づくりの活動も行っている簗田寺。

そんな簗田寺と東京チェンソーズとの関係はというと、YATOプロジェクトを進める上での森の管理を考える際にお声をかけてくださったのがはじまりです。

今日のトークテーマは「森と信仰」。

坐禅で各々、自身の心と向き合う

「ちょっと本題に入る前に、せっかく紘良さんに来ていただいているということで、デモ坐禅をしてみたら面白いんじゃないかと…」(吉田)

との呼びかけに、

「坐禅というのは、野外でもできる、どこでもできるというのが特徴なんですよ。だからこういった形で森の中で坐禅をするのはピッタリですよね」(齋藤さん)と、まさかの初っ端から森の中で坐禅…!

参加者それぞれが15分、自分の心の変化に向き合いました。

その後は、双方が活動紹介を行い、本題の「森と信仰」へ…

★東向山簗田寺の齋藤 紘良さんとのトークイベント「森と信仰」の詳細レポートは後日公開します。そちらもお楽しみに!


普段森に行くことのない街の人々が山に訪れ、それぞれの目線で素材を見て、山を歩き、自由に五感で感じてみる。それぞれがそれぞれの森との関わり方を見つけていく…

森や木に対してぼんやり感じていた概念をひっくり返す。まさにパラダイムシフトです!

文:阿部真弥

写真:キッチンミノル