第140回 根っこの魅力を掘り起こせ!
まるごとニュースレターの初回(2021年1月)を飾った根っこが久々登場。価値がないとされ、山から出してくることがなかった根っこですが、一手間加えてみると魅力がいっぱい。販売事業部・吉田に聞きました。
―これは何ですかね?
これ、根っこです(笑)
―すごい色が綺麗ですね。
そうですね。樹皮剥いたばっかりなんですよ。
―きらめいてますね。どこの現場から出てきたんですか?
時坂の社有林です。2016年から作業道を作っているのですが、そこから出してきたものです。
―今期はいつから作っていたんでしょう?
6月くらいからですね。作業道を作っていると根っこはもちろん出てくるんですが、全部が全部使えるわけではなくて、今回は小さいのも含めて5つ。ダンプに乗せて持ってきてくれました。
―新しい根っこは結構久しぶりですね。
ほんと、久々。やはり綺麗ですね。光沢感がすごいですね。
―確かに…
ここらへんもすごいですね。ほんとラブラドールの毛みたい! 虫喰いの跡もありますね。
ーですね。このシワシワもいいですね。シワシワは風で揺れるのを支えてるからですよね?
はい、でも、風だけではないかもしれないですよ。
―というと…?
枝打ちなんかで木に登ると分かるじゃないですか。めちゃくちゃ揺れますよね?
―はい。10mくらい登ると、これ大丈夫かなというくらい(笑)
慣れないと怖いですよ。
そういえば、今朝、うちの犬の散歩で、すぐ裏のスギの林に行ったんですよ。そうしたら、おそらくクマが登ったんでしょうね、ものすごい削られた跡がついた木がありました。
―そういうことで揺れたりもするんでしょうね。
―今回の根っこは、現場で伏見くんが厳選して出してきたものなんですかね?
おもちゃ用(※)に小さいのがほしいんですが、70年生になると小さい木がないので社有林では難しいんですが、とりあえず中くらいのサイズのを出してきてくれたというものです。
※「ひっつきむしと東京の森 切り株」というおもちゃを作ってます
―そうなんですね。抜根には大体どれくらい時間かかるんですか?
早いと多分数十分で掘り出せるんですが、大きいのは2〜3時間から半日くらいかかることもあります。地面が岩がちなのかどうか、また使う重機のサイズなど状況によって全然違うので何とも言えないですね…
―なるほど。
もう掘っても全然うまくいかない時は、チェンソーで少し切れ込みを入れて、抜き出してます。
―抜いたあとは穴になりますよね?
そう、ボコっと穴になるので、そこをまた埋めて。
―そうですよね、道ですから。
以前は掘り起こした根っこは、作業道の路肩側を掘って埋めて、かさ増しに利用してたんですよ。今もある程度はそうしてると思いますが、そうすると日の目を見ないんですよね。
― ですね。
根っこの魅力を世の中にお見せするためには、現場から出さないといけないし、樹皮を剥く作業も必要だし、用途によっては乾燥、工房で加工という工程もあります。
―そうしないと世の中に根っこの良さが伝わらないです(笑)
掘り出した直後は、ただの泥だらけの塊ですから。
―最初はどういう経緯で出してくることになったんですか?
詳しい状況は覚えてないですが、作業道を自分で作っていて、根っこを掘り起こすんですが、使われないでそのへんに転がってるのを見て、何かもったいないと思ったあたりかなと…7〜8年前くらいのことですね。
―出してこないと樹皮を剥いてみようと思わないし…
そうです。で、工房の関谷くんも面白がって切ってくれたんですが、そうしたらその木目がものすごく綺麗で…
―はい。
普通は山に転がって、埋められてしまうものが、何かしら形になって世に出ると…
結構、手間はかかるんですが、〈1本まるごと販売〉のすべてを体現してるというか、象徴ですね。
―どういう使われ方が多いんでしょう?
大きいものはオブジェとして使われることが多いですね。あとはスライスしてカッティングボードを作ってワークショップをやったこともあります。
―木目の表情がいいですからね。
はい。ほんと、何か製品を作れるといいんですが、安定供給ができないし、同じサイズ感もなかなかないので、定番製品をというのは正直難しいのかなと思いつつ…ですが、いろいろ考え中です!
■素材データ
サイズ:高さ:1200mm、根の広がり:1000mmなど
樹種:スギ、ヒノキ
状態:未乾燥
伐採時期:2025年6月〜8月
(編集後記)
先日、社有林ではないですが、作業道を作っている現場に行ってきました。ここは間伐等の手入れがされてない箇所も多く、作業道作設ルート上にも立木がたくさん。ということで、伐採・抜根が多く、根っこが大量生産(?)されていました。道の横で山から運ばれるのをじっと待機中の根っこたちの写真を添えて(木田)