2019.09.11

古き良きもの

先日、岩手県を訪れました。
母の故郷が久慈市だったこともあり、岩手は子供の頃から馴染みのある土地でした。大阪に住んでいた頃、寝台列車で東北へ。寝台室前の窓際の折りたたみ椅子に腰掛けながら、車窓から時々見える街並みを見ることが好きでした。青森駅から鈍行列車を乗り継いで久慈市に入り、夏休みを過ごしていた思い出の土地。祖母の喋る訛りの強い久慈弁や田んぼいっぱいに広がる蛍の景色などが懐かしく思い出されます。

今回訪れたのは岩手県の花巻市。檜原村から車でゆっくり東北道をひたすら北上すること約10時間。
目的地である大沢屋旅館へ湯治に訪れました。
この辺りはとても素晴らしい自然がある中で、ディープな温泉がたくさんある地域でもあります。
今回はじめて泊まった大沢屋旅館もとても雰囲気のある独特な世界観でした。

築200年以上が経つ建物。時がつくり出した貫禄があります。

初めての湯治。しかも自炊部というディープな世界。
建物は築200年以上経っているという素朴な一軒宿。
宮沢賢治や高村光太郎も愛した無色透明なアルカリ性単純温泉。
廊下は綺麗に磨き上げられ、階段はいい具合に軋みます。夜歩く時は迷惑にならないように忍び足で歩くようです。
自炊部には、10円で7分程使えるコイン式のガス台があります。
コレがまたいい具合に貫禄がある。
今時こんなガス台があるんだと湯治全盛期の頃が偲ばれます。

油が染み込んだガスコンロ。10円で7分ほど使えるはずだが、コンロによって当たり外れがある。

南部藩氏の常宿であったと言われる菊水館は現在見学のみ。
広縁から昔ながらの窓ガラス越しに眺められる庭木や渓流、川向こうには混浴の露天風呂が見えます。
江戸、明治、大正、昭和、平成、令和と歴史を紡いできた名旅館。
温泉で体を休めるだけではなく、長い歴史に思いを馳せることができる素敵な古き良き空間でした。

シンプルで素朴な部屋。窓の下には豊沢川がのんびりと流れている。

見学のみの菊水館。宮沢賢治ゆかりの建物です。

帰りには花巻駅近くのマルカン百貨店へ立ち寄りました。地域の人々に愛されながらも一度閉館したマルカン百貨店を地元の株式会社小友材木店の小友社長が復活させ、2020年春には花巻おもちゃ美術館を開設する予定の場所です。現在は1階店舗と6階の大食堂のみの営業。2階に花巻おもちゃ美術館が入るそうです。
地方創生というと、都市部の大企業が儲かるための政策なのではと疑いたくなるようなケースも目につきますが、その土地出身の人ががんばって引っ張っている事例はとても素晴らしいですね。小友社長はITと木材店を融合させた世界一カッコいい材木店を目指している素敵な会社ですので、本業だけでも大注目の会社です。
花巻おもちゃ美術館ができた頃、また特大ソフトクリームを食べに来たいと思います。

昭和レトロな雰囲気のマルカン食堂にて、巨大ソフトをほうばる。

この日記を書いた人

青木 亮輔

青木 亮輔

1976年生まれ。大阪府此花区出身。東京農業大学林学科卒。1年間の会社勤めの後、「地下足袋を履いた仕事がしたい」「後継者不足の林業なら自分にも活躍の場があるのでは」と、林業の世界へ。

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