2016.02.19

顔がみえる仕事

月日が経つのは早いもので、ついこのあいだ年が明けたと思っていたらもう、2月の中盤。まだ朝夕は冷え込みますが、日中は天気に恵まれると陽射しに春の陽気を感じます。きょう2月19日は旧暦の「雨水」にあたり、土脈が潤い始める時季とされています。そういえば、事務所の庭にも福寿草がぽつぽつと顔を覗かせているし、木を伐っていて切り株に触れるとほんのり湿り気を感じるようになりました。春はすぐそこです。
秋から冬にかけての木こりの仕事は、木伐りがメインです。春から夏に水分を吸い上げ成長した木は、寒くなるにつれ徐々に冬眠状態にはいっていきます。この冬眠状態がいわば、木がもっとも落ち着いている時期であり、この時期に伐った木は乾燥がし易く、虫が付きにくいなどといった利点があります。現在、社有林では吉田チームによる60年生のスギ、ヒノキの伐採・搬出が行われていますが、ここで伐り出された木は製材を経て、住宅用の建材として生まれ変わる予定。いままさに社有林の杉を使った社長・青木の自宅が着工中です。そのほか冬の仕事としては、私が担当している間伐や枝打ちなど。やはりチェンソーを使った仕事が中心になります。
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先日、稲城市の里山で山桜を伐る仕事をいただきました。胴回り2メートルほどある立派な桜です。依頼主の希望はこの山桜を使ってテーブルを作ること。ただ、なにせたった2メートルほどでも1トン近くの重量になるので、伐った後の運びだしが容易ではありません。現場は軽トラックでなんとか入っていけるほどの道幅です。大きなトラックを使って力任せには運ぶことは出来ません。何とか街まで降ろそうと、(あまりない)知恵を絞って考えましたが、思うようにはいかず。困り果てたところで、外部のお手伝いをお願いし、なんとか無事に任務完了となりました。
別の日には、奥多摩で民家の屋根にかかったスギ枝の枝打ちをしました。雪で折れて被害が出る前になんとかしてほしいというご依頼でした。登降器を使って15メートルほど登ります。普段の山奥での作業と違って下はすぐ家。絶対似失敗しないようにと緊張しました。どちらも当初、想定した以上に手間がかかってしまい、自分の実力不足を痛感し、いろいろと反省の多い現場でしたが、一方で個人的には非常に充実感を覚えた現場でもありました。それは普段の山での作業と違い「相手の顔が見える」仕事だと感じられたからです。
林業は時間軸の長い仕事です。植えてから立派な木に成長するまでざっと60年。100年を超す場合も多々あります。毎年春になると、数千本の苗木を植林しますが、この苗木の収穫を自分で見届けられるのか。伐り出した木が最終的な製品になるまでも同じです。自分で伐った材木がどこでどのように活かされているのか、恥ずかしながら具体的にいつもイメージして実感しながら働けているとは言い難いです。時間的にも距離的にも成果物までが遠い。林業とは他の仕事と比べて、結果が確認しづらい職種といえるかもしれません。もちろん、このスケール感こそが林業の魅力なのですが、農業は毎年収穫ができて、食べてみることまでできてうらやましいなーと、感じたり。仕事の結果として誰かに喜んでもらえる、社会に貢献できていると実感しながら働くことはとても大切なことだと思います。
年末、同期3人と生意気にも築地の(回らない)お寿司に行きました。カウンター越しに覗く、職人の自信に満ちた姿。相対しつつお客の反応が直に伝わる仕事です。うらやましい反面、すこし恐ろしく感じました。自分はそこまでプロ意識を持って仕事ができているか。相手の顔がぼんやりとしか見えないことに甘んじていないか。堂々と胸を張って技術・サービスを提供できているのか等等。自問自答しながら食べたお寿司は忘れられない味となりました。
 
 
 
 
 
 
 

この日記を書いた人

佐田 周平

佐田 周平

佐田 周平

1981年生まれ。大阪府高槻市出身。早稲田大学文学部卒。業界紙の記者として勤務後、一次産業で働きたいと思い、林業の世界へ。ロープワークやGISの技術習得に貪欲。樹木医。林業架線作業主任者。

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