2016.05.05
What is being sustainable?
少し前の話になってしまいますが、3月7日から20日の間在日スウェーデン大使館にて「Treasures of the Forest〜森のタカラ、未来のチカラ〜」と題された一連の森林関連イベントが開催されていました。
弊社飯塚潤子がそのオープニングセミナーにて枠を頂いた関係で私も参加してまいりました。
当日は現在の経済における森林の役割の重要性に焦点をあて、日本・スウェーデン両国から林野庁官僚、政治家、民間企業人、研究者達が活発的な意見交換を実施し、人・社会がどう森林を活用し共に成長していくかといった貴重なお話を伺うことができました。
スウェーデンは国土の7割が森林です。林業に携わる人口は10万人、総人口との割合は10%。森林関連の輸出額は年間約1.5兆円で国の総輸出額のおおよそ10%を占めるそうです。日本も同じく国土の7割が森林ですが、林業人口は5万人、総人口との割合は0.004%ととても低いのが現状で、丸太の年間総搬出量を比較しても日本はスウェーデンの約1/4に留まります。両国の国土面積はほぼ同じですので、そのうちの7割を占める森林面積から出てくる丸太搬出量にこれだけ差がでてきてしまう理由はなぜなのか。
当日の話の中で特に感じたのは、スウェーデンでは森と人々の生活が現在でも当たり前に繋がっているという点でした。印象的に残ったコメントの中に「森は我々の夢、恐怖、そして神話の媒体である。」、「森は我々の心であり、魂である。森を通して社会を、人々の生活をより良くする。」といったものがありました。
又、「バイオエコノミー」と「イノベーション」といった日本の林業界ではあまり聞かないキーワードが1日を通して頻繁に使われていました。日本ではまだ馴染みの無い「バイオエコノミー」ですが、近年欧米諸国(特に北欧、オランダ、ドイツ)にて活発に議論されているコンセプトで、石油を中心とした化石燃料経済からの脱却、森林由来の資源にての代替による新しい経済発展の形を意味しています。
「現在、化石燃料で作れるもので森林由来の資源にて代替できないものは無い」という確信の基、繊維、木材、エネルギー、化学、紙といったあらゆる産業の革新的なイノベーション及び産業間の横の繋がりを通じ、持続可能且つ継続して発展が可能な経済を創造していくというメッセージはとても力強いものでした。
私たちのように日々西多摩の山々で働いていると「持続可能な林業」とはなにかについて考えさせられます。先日も林業関係者から「持続可能な林業がなにかわかっているのか」とお叱りを受けたばかりです。
スウェーデン大使館での1日で一番の「目からウロコ」はスウェーデン側の官僚、政治家、企業家、研究者全員が「持続可能な林業」の話ではなく「持続可能な社会」について語っていた点でした。人の生活をより良くするために化石燃料主体の生活から脱却し、且つバイオ産業を通して今まで通り、もしくはそれ以上の経済発展をするといった一回り大きい視点、「持続可能な社会」の実現の為の歯車の一つが「持続可能な林業」である。なんだか視野の広さと社会全体の団結力の違いを感じてしまった1日でもありました。
この日記を書いた人
吉田 尚樹
吉田 尚樹
1978年生まれ。東京都杉並区出身。マカレスター大学文化人類学部卒(アメリカ)。外資コンサルティング会社に8年勤務後、「社会と自分にとって意義のある仕事」を求め、林業に転職。一家で檜原村へ移住。現在二児のパパ。