2016.11.06

担子菌は手が4つ

寒くなってきました。みなさまお元気ですか?
勤勉かつなんらかの使命感に燃えた他メンバーたちが、燃えるような熱意をもってここまで(ほぼ)毎週欠かさずに更新されていた当ブログを大幅に遅延させた犯人・佐田です。反省しています。ということで今回は、贖罪の気持ちを込めてあくまで真面目に物憂げな秋を綴ってみたいと思います。
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img_20160924_084413 ↑幻の天然マイタケ
11月に入り、ずいぶん日がみじかくなりました。
山の峰々が色づきはじめ、そろそろ紅葉の季節がスタート。といいたいところですが、こちら檜原村はすでに秋を通り越して、冬のような寒さです。つい先日まで、夏日の陽気があったりしてTシャツで過ごしていたのに、あっという間にもうダウンジャケットの登場です。地球温暖化の影響なのか詳しくはわかりませんが、近ごろ本当に春と秋がみじかくなったような気がします。
食欲の秋・読書の秋・芸術の秋など、秋を形容する代名詞はたくさんありますが、僕は秋になっても食欲は増えませんし、急に読書がしたいとも思いません。僕にとっての「秋」とは、誰がなんといおうとも何を隠そう「菌類の子実体の季節」です!!なかでも、この時期は減数分裂によって生ずる胞子を子嚢のなかに作る子嚢菌類と、菌糸が管状の形態をとる担子菌類が活動を目に見える形で活発にす期間で、林床では胞子を放出するための子実体が多数確認できます。さらに細かく説明すると、これら菌類は栄養の吸収の仕方から、動植物の遺骸を栄養源とする腐生性の①木材腐朽菌、腐朽菌と植物の生きた根と共生が必要な②菌根菌、昆虫類に寄生する③冬虫夏草菌と分類されます。すべて生態系のサイクルの「分解」という重要な部分を担当しており、子実体があることで植物を構成するリグニン等は分解され、複雑構造のタンパク質は簡単な構造を持った物質に変化し‥‥等々。
はい。調子に乗ってすいませんでした。以上、ほとんどがwikipediaからの盗用です。要するに子実体=キノコ。ただのキノコのはなし。「秋といえばキノコ。ほんとキノコって美味しいよね」と言いたかっただけです。
img_3670↑タマゴタケが一番好き
暗い森の中でひっそりとたたずむ、我が愛しのキノコたち。にょきっと立つ姿は、色が毒々しかったり、花びらのように可憐な姿をしていたり千差万別ですが、キノコが生えている箇所だけはなぜかそこだけ浮き出たような、違った空間があるような存在感があります
先日、同じくキノコに憑りつかれた友人(キノコ検定2級)と奥多摩のさらに奥。原生林に分け入り、1泊2日の菌類子実体の調査‥、ではなくただの「キノコ狩り」に行ってきました。狙いは念願の天然まいたけです。ただ、今年は雨が多く天候不順で不作だったようで、一応、白まいたけは見つけたものの、半分腐っていて食べられませんでした。去年もらった天然まいたけは色も香りも栽培物とは別物で、食べた瞬間、口のなかに原生林が広がるような、まるでアクのかたまりをたべてるようなワイルドフレーバに打ちのめされたのをよく覚えています。結局、その日は天然ミズナラ林を半日ほど探索して。可食できそうだったのはマスタケ、ナギナタタケぐらい。検定2級の友人が同定したブナハリタケを夜の宴会で‥、じゃなかった研究発表会で味噌汁にして頂きました。
img_20160924_073358 ↑マスタケは可食かどうか意見が分かれるらしい
このように、観てよし、食べてよしのキノコですが、かれらは林業とも密接に関わりを持ちます。森の分解者と呼ばれるキノコは有機物を食べて、植物の生長に有効利用できる物質に変換する重要な役割を担っています。松林とマツタケに代表されるような樹木と外生菌根との相利関係、被子植物の80%が形成するといわれるアーバスキュラ菌(AM菌)とリン・窒素の関係、そのほか腐朽被害木の診断など、育林と菌類は切っても切れない関係にあります。ただ、残念ながら(私の知るあくまで狭い範囲の中で)一般的な林業の現場で、土壌の菌類環境まで考慮されて山づくりが行われていることはほぼ皆無といえます。
大体が、林業の悪しき伝統である経験と勘。あとは「地味(ちみ)」などという、何を指しているのかなんともあいまいな言葉で片付けられる程度です。「土壌を知らずして林業は成り立たない」「足元には熱帯雨林以上の多様性が広がっている」等々。意欲的かつ先進的な取り組みをされている方々のお話を伺っていると、示し合わせたように最後は土壌と菌類の関係に辿り着きます。ついこのあいだ、お話を聞く機会をいただいた三重県の森林組合の方も同じく、樹木と土壌菌類の関係性について「適地適木」という観点から強調されていました。最近ではダイオキシンや放射性物質を分解する菌類が発見されたというニュースも聞きます。地面にはまだまだ知られていない奥深い世界がありそうですね。
img_20161029_130926 ↑檜原キノコセンターのマイタケは天然物に匹敵する風味
というわけで、菌類とカビについて個人的に勉強不足を痛感する今日この頃ですが、現状ではいまだに菌とカビと細菌とウイルスの区別も付かないレベル。理科は中学まで、高校生物は夢の中という感じで過ごした自分を今さら恨んでいます。唯一、今秋取り組んだ実践的研究としては、弊社の感謝祭で「きのこ汁」を作ったことでしょうか。檜原産マイタケを中心とした7種のきのことイノシシに、少量の水を加えただけの濃厚な真っ黒い出汁は、まるで漢方薬のようでした。(美味しかったかどうかは別として)、来年は今後のキノコ研究の成果を反映させて、さらなるパワーアップを目指したいと思います。
佐田

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