2024.01.30
第105回 「木材として活かしたい!」〜東京産モミの角材
檜原など西多摩の山でもわりあいよく見かけるモミの木。しかし木材としての市場での流通はあまりなく、チップにされることが多いようです。しかし、「なんとか木材として活かしたい! 」。そんな現場の想いを届けるモミの角材。販売事業部・吉田に聞きました。
―これは迫力ありますね、何の木ですか?
これはモミの木です。青梅の成木の現場から出たものです。
―大きいですね。
胸高直径が60cmを超えるようなものが普通にありました。おそらく樹齢も100年は超えてるんじゃないでしょうか。
―モミが結構たくさんある現場だったですか?
多かったですね。実は現場が始まるとき、担当者から「今回はモミいっぱい出るんだけど、何か使えないか」と相談を受けていたんです。それで1度見に行きました。
そうしたところ「もちろん原木市場へ持って行こうと思うけど、どれくらいの値段がつくか分からない」という話がありました。
―はい…
その後、値がつきやすい元玉(※)を原木市場に実際に出荷しましたが、かなり安かったです。建築で柱材に使うようなヒノキの1/4とか1/5の値なんですよ。
※元玉:丸太のうち、根元に一番近い部分。
―どうしてなんでしょう?
おそらく、使い道がないとされてるからなんですね。土木現場の矢板とか、そういう使い方しかないんでしょうね。だからとにかく安く取引されているんです。丸太をかなりの本数持って行きましたが、ほとんどその値段でした。悲しいです。
―確かにそうですね。
今回、現場の班長が思(おもい)さんなんですが、「林業人としてこれを単純にチップに出すことはできない。安くても木材として使いたい」と熱い話がありまして…
―なるほど。
それを聞いて、100年生きてる木で、めちゃくちゃ大きくて重くて、スギ・ヒノキに比べて引き上げるのに何倍も労力がかかってるんですから、何か新しい売り方を考えないといけないと思いました。
―そうですね。
それで角材を取ってベンチにするとか、天板の板を取ってテーブルにするとかしたら面白いんじゃないかと思って、市場に出すだけでなく、一部を社内で使うこととしました。
それがこの角材で、東京産モミの角材ベンチシリーズを作ろうと考えてます。
―座りやすそうな大きさですね。
ここに並んでるのは直径45cmから55cmくらいのもので、ベンチにはちょうどいいサイズかなと思ってます。市場に出さなかった二番玉(※)を挽いてもらったものです。
※ 二番玉:丸太は根元から元玉、二番玉、 三番玉と数えるので、元玉の上の方の部分。
―板の模様が面白いですね。
節も大きいです。
―これほどの塊だと、乾燥は結構時間がかかりますか?
年単位でかかると思うんです。でも、天然乾燥を1年して、その後乾燥機に入れるという方法もあるので、1年後に使うこともできそうです。
↑角材ベンチのイメージ
■素材データ
サイズ:全長:1500mm、2000mm、幅:450mm、厚み:450mm
樹種:モミ
状態:未乾燥
伐採時期:2023年11月
重量:400kg
(取材後記)
林業事業部・思の熱い想いを販売事業部が形にしたモミの角材。重厚感あふれる形状で、一眼見るだけで誰もが座りたくなる一品です(木田)。
この日記を書いた人
木田 正人
木田 正人
1966年生まれ。青森県弘前市出身。日本大学農獣医学部卒。雑誌記者など出版界勤務後、「人のため、地球のための仕事」をしたいと思い、林業を志す。東京チェンソーズ設立当初から森林整備と広報を担当。