関谷 駿インタビュー
チェーンソーも使える、根株好きな工房長!
普通の工房で扱わない素材の加工に、楽しみを覚えて
―工房ではどういうものを作ることが多いですか?。
企業などからの発注で、棚やテーブル、ベンチ、スツールを作ることが多いです。あとは自社の販売用で、コースターや一輪挿しなど雑貨、ワークショップで使うスプーンキットやぶんぶんごまなどを作っています。
―特徴を教えてください。
林業会社なので、山の現場から直接届いた大きな根株とか、根張りとか、普通の工房では扱わない素材を製品化することがあって、そこがおもしろいところです。
基準面が真っ直ぐ出ていないもの、不規則な形状のものを正確に加工することも多くて、例えば、コースターだったとしても、同じ厚みで曲がらずに切り続けるのが意外と難しかったりします。
―最近はどんな仕事をやっていますか?
今日は、ある大学でキャンパスの一部をリニューアルするということで、学生がデザインした什器を作って納品しました。じきにフィードバックがあるので、それを受けて本製作します。
他には、ある施設で伐採した木を使って、キャンドルホルダー、カッティングボード、サービングトレー等を作り、再度その施設に納品しました。
―最近は学校や、施設の案件が多いですね。
そうですね、あとは商業施設やショールームなどの企業案件。依頼された案件が、自社商品に比べ7:3で多いですね。
―依頼される仕事の特徴はありますか?
ここのところ、伐採木を活用したいという案件が多いですね。いろいろな事情で伐ったけど、思い入れのある木なので使いたいというものです。そうした仕事は、図面を書くところから始めることが多く、長いスパンでの取り組みになります。
「今後は木を加工して、付加価値をつけて売っていきたい」の言葉に誘われて
ーそもそも木工を始めたきっかけはなんですか?
家族も親戚も木工だけでなく、ものを作ることが好きなんですよ。そうした土台があったということもあってか、10歳の誕生日に電動糸鋸を買ってもらったというのが大きいですね。
木工だったのは、素材として木が一番扱いやすくて、身近にあったということもあります。
―初めはどんなものを作ってたんですか?
パズルとかです。富士山や日本地図を作っていました。
小学校の時、“あこがれ夢広場”という特別授業があったんですが、そこで日の出町のクリエイターで、組み木絵作家の中村道雄さんという方が先生で来まして…
―あこがれた?
そうです。
―作ったパズルは?
自分で遊んだり、小学校の先生が転任になる時にプレゼントしたこともあります。
―チェンソーズとの関わりはどこから?
専門学校の時にインターンで来たのが一番初めです。もう10年くらい前です。
―結構前ですね。その頃、木工はなかったですよね?
初めは林業現場の下刈りでしたね。青梅の山で3週間、毎日、鎌で草を刈っていました。夏は暑くて、日に日に持っていく水の量が増えていき、最終的には5リッター(笑)。
でも、鎌の研ぎ方や植物の種類を教えてもらったり、楽しかったです。草の匂いとかも覚えてます。
―そもそもなぜ、チェンソーズに?
学校の授業の中に長野での林業実習もあったりして、林業に興味を持っていたんです。それで、インターンを選ぶとき、東京、関東で林業を検索して。そうしたら上位にチェンソーズが出てきて、ホームページにあった企業理念に共感しました。家も近く、自分の住んでいる地域の山というのもよかったですね。
―卒業後、就職したのは?
最初に就職したのは造園屋です。もともと木や自然が好きで、その癒される感じを都心の人にも分けてあげたいと思いました。でも事情があって造園屋は4か月でやめてしまい、その後短期間ですが、チェンソーズで現場のバイトをしたこともあります。
―そのあとですね、チェンソーズともいよいよ木工で関わっていきます。
ちょうどその頃、木育のイベントに誘われて行ったということもあり、興味が出て、木のおもちゃの製造会社で木工の仕事をしました。
そのことをチェンソーズのイベントに行った時に代表の青木さんに話したら、「これから木を市場に出すだけではなく、加工して付加価値をつけて売っていきたい」と聞いて…
―で、一緒にやるようになった。
そうなんです。初めは請負、そこから常勤アルバイト、契約社員、社員となりました。
最初は家でスプーンなんかの小物を自分の仕事の合間に作っていました。でも、そのうち大きなものの依頼が増えてきて、自宅ではできないので檜原にあるチェンソーズの倉庫で仕事するようになりました。
―冬は寒いし、夏は暑い。環境的にはあまり良くなかったかもしれないですね…
確かにそうなんですが、それでやめようとは思わなかったです。
会社の考え方に共感して、やりがいを感じていました。ホームセンターでは売ってない、普通なら手に取らないであろう変わった素材も扱えましたし。日々、新しい発見がありました。
林業現場とのコミュニケーションを密にし、工房としても成長を
―それが今は立派な工房。環境がだいぶ変わりました。
人も増えて、現在は3人体制でやっています。これまで1人作業ばかりだったので、悩みの質が変わりました。
機械は揃っているんですが、収納がない、マニュアルがない…。手探りで進んでいる感じです。
―工房長として、安全面も整備しないといけないですし…
そうなんです。1年前からリスクアセスメントの手法を取り入れてまして、今はリスクを低減する措置の実現まで進んできました。機械ごとの注意点を書き込んだマニュアルを準備しているところです。
―チェンソーズと関わってもう10年。いい面、悪い面が見えてきていると思います。いかがでしょう?
林業の現場もやっているので、その現場が木を出してくれるから、木工ができるんだと実感してます。現場に材を取りに行くと、現場も作業を止めて協力してくれたり…。そういう関係性がいいですね。
現場の空気感も知れて好きです。
―大事なところですね。
現場とのこうしたコミュニケーションをイベントやワークショップで伝えることができるのもいいところです。現場との密な関係を体験できる木工家はあまりいないんじゃないかと思ってます。
―今後やりたいこと、取り組みたいことを教えてください。
山と近い利点をもっと活かしたいと思っています。
個人的には、根株を割きたいです。魅力的な木目が出てくると思いますよ(笑)
―チェンソーズの工房にはどんな人が向いてそうでしょう?
木工が好きなのは当然として、木工の枠にとらわれないで、いろいろ楽しめる人。
さっき話した根っこを割くじゃないですけど、変わった素材がたくさん手に入る環境なので、それをどんなふうに加工するかなど柔軟に楽しんで考えるのが好きな人。あとは、会社のビジョンにしっかり共感してくれる人ですね。
工房としても、今後様々な仕事をしていく中でもっと成長していきたいと思います。
なぜ東京チェンソーズに入社したのか? 仕事での楽しみは? 林業現場で活躍するメンバー2人、森と街をつなぐ最前線である材料調達班(販売事業部)、伐った木を活かす担当の工房長に、入社した動機や仕事の醍醐味などを聞きました。