2023.08.22

第96回 この木目、只者ではない!

檜原村の旧製材所跡に眠っていた、木目の模様が只者ではないスギのスライス。全体の形状も個性的…。販売事業部・吉田裕貴に聞きました。

―これは何の木ですか?

スギです。

―板と呼んでいいものなんでしょうか?

いや、なんと言ったらいいんですけね…
製材したとき残った、端の部分なんです…

―なるほど…。それにしても凄まじい模様ですね。何か燃え盛るような…

そうなんです。こういう木目を“杢”(モク)と言いますが、こんなのは見たことないです。何か執念を感じますね…

※杢:一般的な木目である“柾目”“板目”とは違う複雑な模様のもの。見た目の美しさ、珍しさから貴重とされる

―何でこんなにすごいことになったんでしょうね?

はっきりは分からないですけど、周りの環境でストレスがかかったか、あるいは遺伝的な要因なのか…

―ところでこの6枚、同じ木なんですか、別々の木だったんですか?

左2枚、真ん中2枚、右2枚は明らかに同じですよね。

―確かに…

右の2枚は受け口の跡があるから、根元付近なんですよ。

※ 受け口:伐採するときに初めに斜めに切り取る部分。倒す方向を決める

―そうですね。

もしかしたらですけど、全部同じ、1本の木だったかもしれないです。

―そうなんですか?

上の方のくびれてる位置、大体同じじゃないですか?

―そう言われれば…

受け口がない4枚は製材で挽く方向が違ったんじゃないでしょうか。

―なるほど。

多分ですけど…、こんな模様の木、そんなにないと思うので。

外観も面白い木だったと思うんです。

―というと…

ここにある板で幅25cmくらいあるので、元の丸太ば直径40cmから50cmのそれなりに大きい丸太だったと思うんです。なのに、2mも行かないところでくびれてます。

―つまり、太いけど途中でグニャっとくびれたおかしな形の木を、面白い杢が出るかもしれないと伐ったという訳ですね?

そんな気がします。

―そういう木は普通、もっと早いうちに間伐で伐られると思うんですが…

境界の木だったから目印の意味で残していたのかもしれないですね。その後、事情が変わって伐ることになったんじゃないですか…

―なるほど…

そのくびれが関係して、その下に油分が溜まってこういう杢が出たんだと思いますよ。色が濃いのは油分が多いからなんですね。

―表面は結構ザラ付いてますね。

そうですね、挽いただけだと思うので。磨けばツルツルになりますよ。

―何に使えそうですか?

厚さがないですけど、そんなに反ってないし、節も少ないので、何か小物を作るのに使えるんじゃないですか。この杢を生かして。

■素材データ
サイズ:全長:1600mm〜2000mm、幅:180mm〜240mm、厚み:12mm
樹種:スギ
状態:乾燥
伐採時期:不明
重量:1〜2kg

(取材後記)
この旧製材所は、昨年、弊社が購入し片付けをしていたところです。そのとき出てきたのがこの“お宝”。この杢は只者ではないと、今回ニュースレターに登場した吉田裕貴が他と区別して保管していたそうです。ちなみにこの6枚以外にあと2枚あります(木田)。

この日記を書いた人

木田 正人

木田 正人

1966年生まれ。青森県弘前市出身。日本大学農獣医学部卒。雑誌記者など出版界勤務後、「人のため、地球のための仕事」をしたいと思い、林業を志す。東京チェンソーズ設立当初から森林整備と広報を担当。

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