2024.04.09

第110回 _桜の天板〜黄色く輝くソメイヨシノ〜

東京の桜は今がピークだったようです。週末にお花見をされた方も多いかもしれないですね。今回紹介するのは、お花見の桜=ソメイヨシノ。メジャーなわりに、木材としての流通は極めて少ない木です。
販売事業部・吉田に聞きました。

―これは何の木ですか?

ソメイヨシノです。地元の酒蔵さんでウメの剪定を依頼されて仕事しているときに、追加で頼まれて伐ったものです。

―製材して板になっているのは初めて見ました。

そうですね、ソメイヨシノは木材としてはあまり流通してないですから。

―なるほど。

やはり花の観賞用に植えてる木ですから。

ーどの部分なんですか?

これは一番根本に近い部分なんですが、そこから1.5mくらい上で枝分かれしてます。何かに使えますかと、伐採の現場から連絡があり、取りに行きました。

―色がすごい黄色いですね。

ヤマザクラもそうですが、サクラの種類は黄色いですね。

―雨に濡れたからというのは関係ありますか?

いえ、濡れてなくてもこの色なんですよ。ただ、経年変化で、空気に触れているうちにだんだん落ち着いて行くとは思います…

―それにしても、1枚の板の中での色の差は面白いですね。

芯材と辺材でまず違いありますよね。オレンジっぽいところがあって、その外側の白いところが辺材です。
中心付近に褐色部分もあるし、それにいくらかシミが入っているので、黒っぽい線も入ってます。

―はい。

ほかに特徴としては、街中の日当たりのいいところに育ってた木なので、成長がとても早いですね。だから年輪の幅が大きい。

―確かにそうです。

木材の価値としては低くなってしまうのが通常なんですが、その分、木目の動きが大きく見えるので面白いです。

―二股部分もなかなか味がありますね。

面白いですよね。
実は二股を製材して天板にするのは結構難しいらしいです。どうしても、反り方が左右でそれぞれ違ってるので、挽いている途中で動いてしまうと聞きました。

―そうなんですね。

でも形が魅力的ですよね。

―色味もすごい。テカテカしてますね。硬そう。そもそもなんで二股になったんでしょうね?

生きるために光合成しやすい方に伸びたとか、そういうことなんじゃないですか。

―なるほど。

ちょっとしたテーブルに使えたらなと思ってるんです。

―この粉は何ですか?

製材したときの木屑ですが、雨に濡れてこんな感じになってます。

―カレー粉みたいですね。

確かに、ターメリック。カレーに入れても美味しいかも(笑)

―スパイシーな香りがしますね。

ですね、でもカレーというより、やはり和菓子じゃないですか? 桜餅ですよ。

―こっちはレモン色ですね。

辺材の部分です。

―なるほど…。板によって風味が違うんですね。全部で何枚あるんですか?

9枚です。

―この切り込みは何でしょう?

伐採するときに芯抜きしたのかなと思います。

―芯抜きとは?

初めに芯の部分だけにチェンソーの刃を突っ込むように入れて切るんです。芯の繊維を切ることで、倒れるとき木が裂けるのを防ぐんです。

■素材データ
サイズ:全長:1500mm、幅:400mm〜800mm(二股部分)、厚み:50mm
樹種:ソメイヨシノ
状態:未乾燥
伐採時期:2024年2月
重量:30kg

(取材後記)
桜の花は限りなく白に近い淡いピンクで、儚い印象がありました。が、板にすると全然違って派手。正直、驚きました。本文にもありますが、経年変化で色は落ち着いていくようですので、そうした自然の移ろいが楽しめるのもいいですね。余談ですが、桜の名所・青森県の弘前公園では4月中旬からが見頃です(弘前出身・木田)。

この日記を書いた人

木田 正人

木田 正人

1966年生まれ。青森県弘前市出身。日本大学農獣医学部卒。雑誌記者など出版界勤務後、「人のため、地球のための仕事」をしたいと思い、林業を志す。東京チェンソーズ設立当初から森林整備と広報を担当。

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