2024.11.12

第124回 コナラの未来はこれから

ナラ枯れ被害で伐採したコナラ。樹皮に近い部分は朽ちていても、真ん中の芯はしっかりしているものも多く。これまであまり使われてこなかったコナラですが、薪以外にも何か活かせればと。販売事業部・吉田に聞きました。

―この丸太は何ですか?

コナラです。

―ここで伐ったんですか?

そうです、うちの社有林です。
入ってすぐのヒノキ・エリアを抜けた先にある、広葉樹ゾーンですね。樹種としてはコナラがメインで、ヤマザクラやカシ、シデなんかが生えてます。

ーここにはスギ・ヒノキは植林されなかったんですか?

植林はされずに、ずっち広葉樹のままだったと思います。集落も近いので、かつては薪炭林として使われていたようですね。
ただ、今は薪も炭も家庭で使われなくなったということもあって、ここ50年〜60年放置されていました。

―そんなに長く…

そうなんです、当時は樹齢20年くらいで伐採して炭を焼いて、翌年は場所を変えて…と続けていたそうです。そうすると、別の場所を伐っている間に、先に伐った場所が天然更新(※)されて、また20年後に伐採という感じだったらしいです。
だから、こんなに大きくなったのはおそらく史上初なんです。

※天然更新:伐採後、自然に落下していた種子が発芽して樹木になり、森林を再生すること。切り株の芽が育つこともある。

―伐られなかったので大きくなりすぎたということなんですかね。それをなぜ今回伐採したのでしょう?

“ナラ枯れ”って知ってますか?

―ナラ類の木が枯れる病気ですよね。

そうです。ここのコナラも“ナラ枯れ”(※)になったんです。

※ナラ枯れ:カシノナガキクイムシが樹木に穴を開け内部に侵入。その際持ち込んだ菌が樹木内で繁殖し、細胞を破壊。樹木は水を吸い上げることができなくなり、枯死に至る。伝染病で、ナラ類(コナラ、ミズナラ、クヌギなど)、シイ、カシ類が感染する。

―枯れてしまったんですか?

いや、全体が枯れてしまったわけではないですが、枝が何箇所か枯れてました。

―なるほど、枯れ枝は落ちてきたりで危ないですよね。

はい、ですので伐りました。特にここは仕事でよく人が通る場所なので。

―なるほど。

全体が枯れて朽ちた木はさすがに使えないですが、このように白太と呼ばれる樹皮に近い部分は朽ちていても、芯はしっかりしているのが結構あるんですよ。
いろいろと使えそうだと思うので、比較的まっすぐなものは製材する予定です。

―そうなんですね。

これまでコナラは反りやすいので家具用材としてはあまり使われてきませんでしたが、硬くて強度が高いので注目されていて、最近はどう使うかという話が家具屋さんあたりから出たりもしています。実際、うまく柾目を取って、家具の細かいパーツに使っているところもあるんですよ。

―知りませんでした…。いろいろ工夫してるんですね。

あと自分のことですが、今年自宅を改修したのですが、その際、壁の羽目板に使いました。

ーそういう使い方もできるんですね。

コナラはこの辺りでも一番ポピュラーな広葉樹ですから、なんとか使えないかな〜と、いろいろ考えてる最中です。そのためにもまずは製材して取っておかないと。

―確かに。コナラの新たな可能性を探る、みたいな感じですか?

そうです、そうです…。

―こちらは?

ヤマザクラです。ちょっと弱っていたので、コナラと同じタイミングで伐りました。

―いい色。

空気に触れていたので、少し落ち着いたようですね。直径40cmくらいあるんですよ。もちろん、これも製材に持っていきます。

■素材データ
サイズ:全長:2900mm
樹種:コナラ
状態:未乾燥
伐採時期:2024年10月

(取材後記)
ナラ枯れは大きくなりすぎた高齢の木に多いと言われています。水分が多いため、カシノナガキクイムシの幼虫が育ちやすい環境にあるからだとの説があります。だとしたら、伐って使って、若い森に戻すのもいいかもしれませんね。それが健康回復の一番の手段とも言われています。社有林では伐採した跡地に新たな命が芽吹いてきていますよ(木田)。

この日記を書いた人

木田 正人

木田 正人

1966年生まれ。青森県弘前市出身。日本大学農獣医学部卒。雑誌記者など出版界勤務後、「人のため、地球のための仕事」をしたいと思い、林業を志す。東京チェンソーズ設立当初から森林整備と広報を担当。

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