2024.02.13

第106回 マトリクス模様のシラカシ天板

東京の山ではよく見かけるシラカシ。硬さ、重さを活かして、かつてはさまざまな器具や枕木などに使われていたそうです。今でも山道具や大工道具の柄、あるいは木刀に使用されています。
今回紹介するのはシラカシとしてはちょっと珍しい一枚板・天板。販売事業部・吉田に聞きました。

―これは何の木ですか?

カシの一種で、シラカシです。この白さが特徴です。

―確かに白いですね。真ん中の芯の部分は色が違うようですが?

割れ止め剤を塗ってるので色が濃くなってますが、使うとき削れば元の色になります。

―シラカシは西多摩地域に多い木なんですか?

そうですね、山の中に行けば、このあたりでもたくさんありますよ。
常緑の広葉樹で、森林内のあまり光が入ってこない湿った感じの場所に結構ありますね。陰樹といって光が少なくても育つ木なんですよ。

―そうなんですね。

そして硬いんです。おそらく関東エリアでは一番。

―なるほど…

それから重さもあるんですよ。比重も0.8くらいある重厚な木で、よく鉈の柄に使ったりしますね。
林業を始めた頃に研修で教えてくれた先生もそうで、何年も置いて乾燥させていたカシを削って柄を作っていました。

―手作りするんですね。

そうです。
一般に販売しているものも、鉈や斧の柄はほとんどカシだと思いますよ。

―どこに生えてたんですか?

青梅の成木地区で伐り出したものです。結構大きい木で、胸高直径が40cm、高さは25mくらいあったと思います。樹齢の高い木が多い現場で、おそらくこのシラカシも100年はいってたと思います。

―天板は珍しいんですか?

やはり柄にすることが多いので、テーブルに使うような天板は少ないですね。

―面白い模様ですね。昔の映画とかに出てきそうな、何かのデータみたいです。

確かに面白いですね。マトリクス的というか…。
製材所で言ってましたが、こういうのを網目と呼ぶようです。

―網目ですか。

別にでこぼこしてるわけではないですけど、そう見えますよね。

ー芯の黒い線が渋いですね。

おそらく菌だと思うんですけど、シミになっていて、それが逆に面白いんじゃないかと思っています。

―墨を流したような…

そうなんです。この派手さのない、地味な感じがポイントですね。

―乾燥したら菌はもう活動しないですか?

乾燥状態がキープできていれば、進むことはないですね。

■素材データ
サイズ:全長:2200mm、幅:420mm、厚み:50mm
樹種:シラカシ
状態:未乾燥
伐採時期:2023年11月
重量:40〜50kg

(取材後記)
このシラカシ、現場から引き出すとき、滑って下の方に落ちてしまったそうですが、何とか出してきたという一品。そこで諦めていれば、ここで紹介することもできませんでした。
その後、製材所に運んで天板用に。芯の黒い線模様は一般的には木材としての価値を下げると考えられているようですが、むしろ魅力的かなと(木田)。

丸太のときはこうでした↓

この日記を書いた人

木田 正人

木田 正人

1966年生まれ。青森県弘前市出身。日本大学農獣医学部卒。雑誌記者など出版界勤務後、「人のため、地球のための仕事」をしたいと思い、林業を志す。東京チェンソーズ設立当初から森林整備と広報を担当。

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