2021.08.03
第28回 透き通るような”赤”! 宝石みたいなヒノキ枝
現場で伐採したヒノキの枝を払うとき、ずっと思っていたそうです。枝の芯を彩る鮮烈な赤。
マテリアル販売事業部・伏見に聞きました。
―たくさんありますね。どこの現場から出した枝ですか?
社有林と檜原村小沢の現場からの枝です。
―樹種もいろいろ?
そうです。スギ、ヒノキ、サワラが混在してます。
―綺麗に樹皮を剥いてますね。
水圧で剥いたあと、タワシがけしてます。
―わりと最近のものですか?
おととし、去年くらいですね。おととし、6000本樹皮剥いたんですよ。それに去年の1000本くらいをプラスしたかんじ。だから乾燥してますよ。
―この倉庫に在庫はどれくらいあるんですか?
3000本くらい。
―枝を初めに出したのはいつごろですか?
4〜5年前だったと思います。初めは社有林の近くの道路に近い現場。でも、あれは出したけど、うまく使えなかった…
―使えなかった?
はい。会社の方向性として「枝も使えるようにしたい」というお話があって、あの現場の枝を全部出しました。
でも、そのときはけっきょく使い用がなくて、土場に出しただけになりました。
―そうでした…
使い道がないまま、何カ所か移動して。また山に返そうかとか…枝には悲惨な過去がある。苦闘の歴史があるんです 笑
―それがいまは。
使われる頻度高めです。
照明やパーテーション、壁の装飾、ドアの引き手、Tokyo Tree Wood のおもちゃも…。ペンダントやアクセサリーを作る人もいます。
―魅力は何でしょう?
すべすべの表面の肌じゃないですか。磨いたわけではないのに艶がある。きらきらしてます。
何か塗ってるんですか、とよく聞かれますが、塗ってないですよ。
僕の一押しは、このヒノキ。芯のこの鮮烈な赤。しかもこれは赤い部分の面積が大きい。
現場で枝払いすると、透き通るような赤が見えるんですよ。宝石みたいだなとずっと思ってました。
―たしかに赤の部分が大きいですね。
そう、赤の比率が大きい。ここまでのはあまりないですよ。
―ここまで赤いのもあればそうでないのもあって、いろいろですね。
そうそう。しかも、同じ枝の芯でも根元に近い部分ほど赤い。幹から離れると薄くなるんですよ。
―こういう艶やかさはこのあとも残りますか?
残るでしょう。切ったときがいちばん透き通るような感じがありますけど、1〜2年たってもこれだけ残ってますから。
あとヒノキの枝は硬いのが特徴ですね。鉈の刃がヒノキの枝の芯で欠けたという話もたまに聞きます。
さらに、しなりが強くて折れにくい。この赤が関係してるのかもしれません。
―それに重いですね。
目が詰まってるんです。年輪数えたら、この細さでも17年かかってます!
―枝はあまり流通してないですよね?
集めるのも、山から出すのも、樹皮を剥くのも手間がかかりますから。ささくれみたいなのも全部切ってますし。ひとつの作品ですね。
村のシルバー世代の人に頼むことが多いんですが、やっていただくと綺麗なんですよ。職人技です。
あと、ヒノキの棒っていったら、勇者が戦うやつ。世の中的には“ひのきのぼう”っていったら…
■素材データ
サイズ:長さ:〜1500mm、径:〜450mm(長さは切り揃えることができます)
状態:樹皮剥き
樹種:スギ、ヒノキ、サワラ
伐採時期:2019年冬、2020年冬
重量:1kg(最大)
(取材後記)
枝は山に散乱しているのが当たり前でした。まとめることはありますが、山から出すことは普通ありませんでした。それがいまでは「1本まるごと販売」を代表するアイテムに。
枝の魅力は人それぞれ。ほかの人が語るのも面白そうと、伏見が最後に話していました(木田)。
この日記を書いた人
木田 正人
木田 正人
1966年生まれ。青森県弘前市出身。日本大学農獣医学部卒。雑誌記者など出版界勤務後、「人のため、地球のための仕事」をしたいと思い、林業を志す。東京チェンソーズ設立当初から森林整備と広報を担当。