2022.10.11

第76回 悶えるコナラ

太いツルに締め上げられたコナラの木。間伐で伐ったあと、檜原村の置き場にやってきました。
とにかくすごい形です。
マテリアル販売事業部・吉田に聞きました。

―これはどういう状況なんでしょう?

コナラですけど、ツルに絞められたんですね。

―ツル植物ですか?

そうです。フジですね。

―絞められて、こういう形になったんですね?

ですね。ツルが巻いてるところで形成層が潰されて、そこはもう太くなれないから、他のところが壺みたいに膨らんだんですね。

―なるほど。そもそもツルとはどういうものですか?

植物なので光合成しようと光に向かって上に行くんだけど、自立できないんですよ。だから他の木を伝っていくわけで…。共生ですよね。

―共生ということは、締め過ぎて、巻いてる木を枯らしちゃったらダメなんですよね。

確かに。木が倒れたら自分も困る。

―でも、いつか、締められてる方はそうなることも。

それまでに自分の子孫が残せればいいという考えなんじゃないでしょうか。
寄生するものは昆虫でもそうですけど、面白いですね。

―面白いですね。

ツルといえば、林業を始めて最初の現場で、ツルは林業の大敵だ、だから見たら切れと言われたことをすごく覚えてます。ツルは林業的視点から見ると嫌われ者なんです。

―木を悪くしますから。

はい。この木のように。

―でも今は、いろんな考え方があるんじゃないですか。

そうです。多様性ということを考えれば、少し見方が変わったかもしれないですね。
ツルも必ずしも敵じゃない。

―ツルも林産物と言っていいのでは。

ツルが欲しい方も実際にいます。

―売ってるお店もありますし。

ということは、今度は、ツルを採取して紹介する回も。

―いいですね。ツルが主役。ただ、今回はツルがもうない。

朽ちてしまいました。

―現場で聞いたんですけど、ツルは1〜2年前に切ったそうです。だからもう長らく枯れたままで巻いてあったんですね。それまでの何十年か、巻いてたんでしょうけど。

そうなんですね。

―だからツルはボロボロになって、ほぼ落ちました。

切って1年以上すると、ボロボロになりますよと。

―もう実体はないけど、巻いていた痕跡が…。ツルに巻かれてた木というのはあまり見かけないかも!

確かにそうです…

―形を活かしてこのまま使うこともできますか?

もちろんできます。ただ、樹皮は擦れたりすると剥がれると思いますので屋外がいいかもしれないですね。

―樹皮を剥いたらその心配もないですね?

そうです。

ー例えば製材して板にしたとしたら、木目なんかはどうなんでしょう?

どうなんですかね。

―気になります。

ツルが巻くことで木にどんな影響を及ぼすのか。木目の流れなんか見えて面白そう。

■素材データ
サイズ:全長:2900mm、直径:220mm〜380mm
状態:樹皮付き、未乾燥
樹種:コナラ
伐採時期:2022年9月
重量:推定100kg

(取材後記)
木に巻いてるツルを切ると、巻かれてた方は「助かった!」みたいな感じになるんですね。ツルにとっては「やられた…」なんでしょうけど(木田)

この日記を書いた人

木田 正人

木田 正人

1966年生まれ。青森県弘前市出身。日本大学農獣医学部卒。雑誌記者など出版界勤務後、「人のため、地球のための仕事」をしたいと思い、林業を志す。東京チェンソーズ設立当初から森林整備と広報を担当。

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