2023.09.19
第98回 ムシクイ迷宮模様のヒノキ細丸太
ヒノキの細丸太。樹皮を剥いて見たところ、そこに迷宮が現れました! 昆虫の幼虫が食べて動いた痕跡だそうです。販売事業部・吉田に聞きました。
―これは何の木ですか?
ほとんどがヒノキですね。
―すごい模様ですね…。なんでこうなったんでしょう?
これは食痕というんですよ…
ー食痕というと…
カミキリの種類が多いですが、伐採後、現場に置いてあった段階で卵が産みつけられ、その後孵化して樹皮の内側で生まれた幼虫が柔らかい部分を食べて移動したんです。その痕です。
―滅多に見れるものではない?
山の人間としては、そこまでレアではですが、世に出てるものとしてはあまりないかもしれないですね。
―というと…
製品に加工する時に削ってしまうことも多いんですね…
―いつごろ伐ったんですか?
4月、5月ごろです。
こういう細い丸太でコースターなどを作ってるので、時期が遅かったんですが確保してもらいました。
―伐採は秋〜冬が適期といいますよね…
そうです。春・夏は伐採した木も水気が多く腐りやすく、エサになるので、昆虫が卵を産むんですね。それで孵化した幼虫が食べるので、このようなムシクイ材が発生するんです。ムシクイは一般的には嫌われるので、その時期の伐採は良くないとされてます。
―冬場ならこうならないんですか?
こうはならなかったでしょう…。あと、現場から移動した後、樹皮を剥くのも遅かったので、余計かもしれません。
―どういうふうに使えそうでしょう?
壁とか、小物でもいいですが、この模様を見せたいですね。
―確かにそうです。もう、虫はいないですか?
おそらくいないですが、中に入り込んでる場合もあるので、燻蒸処理(※)して使うといいですね。
※病害虫が蔓延するのを防ぐ目的で、熱で駆除する
■素材データ
サイズ:全長:3700mm、直径:160mm前後
樹種:ヒノキ
状態:樹皮剥き、未乾燥
伐採時期:2023年4月
(取材後記)
こうした食痕は木材の価値を落とすと一般的には考えられているので、カミキリは害虫とされています。使い方次第かもしれないですが、ちょっと変わった模様としてはいいですよね。私事ですが、家のテーブルは迷宮模様です(木田)。
この日記を書いた人
木田 正人
木田 正人
1966年生まれ。青森県弘前市出身。日本大学農獣医学部卒。雑誌記者など出版界勤務後、「人のため、地球のための仕事」をしたいと思い、林業を志す。東京チェンソーズ設立当初から森林整備と広報を担当。