2023.10.31
第100回 プレーンだけどリッチなヒノキの樹皮剥き丸太
ついに100回目を迎えた「まるごとニュースレター」。区切りとなる今回紹介するのは、一見、何の変哲もないプレーンなヒノキの丸太。…なんですが、その表面をじっくり見ると、、
販売事業部・吉田に聞きました。
―ついに100回目を迎えました。
最初は2021年1月なので、2年9ヶ月。長いですね。
―初めは週刊でしたが、結構忙しく取材に追われ、これでは持続可能じゃないと、去年の夏から隔週に変更。
そうでした。
―では区切りとなる記念の100回目のネタは何でしょう?
ヒノキの樹皮剥き丸太です!
―おお。
今までも結構大きいサイズのものは、ディスプレイ用のような形でご紹介してきましたが、今回は細さが特徴。
―どういうものなんですか?
2本とも社有林のヒノキですが、もう6年くらい前に、あるプロジェクトで関わった設計士の方のリクエストで伐って出してきた木なんです。
―どんなリクエストだったんでしょう?
柱といえば普通は角材、和室の床の間だと磨き丸太(※)を使ったりしますが、磨き丸太ほど価格が高くなく、日常づかいできるちょっと変わった構造材がほしいと。
※樹皮を剥いた後、表面を水圧やタワシなどで磨き上げた丸太。
―なるほど。
磨き丸太に比べてもう少しラフな感じで、背割りを入れずに天然乾燥でということでした。
―少しひび割れが入ってますね。
はい、そういうのも風合いとして捉えて使いたいというお話があって、その時に何本か伐って出したんです。これはその時余分に作って残ったものです。
―社有林の木ということは60年〜70年生ですよね?
そうです。その割に細いですよね。長さが4mあるので、梁として使うといいかもしれないですね。
―面白い線が入ってますね。
これは根株なんかもそうなんですが、木の繊維が風に揺られて千切れて、修復してを繰り返した痕なんです。傷跡ですね。
―なるほど。
あとこの線は、斜面に立ってる木が重力に負けて谷側に行こうとするのを一生懸命耐えて、光を求めて上に伸びる、その時の力も関係してるようです。
―大丈夫なんですか?
強度的には問題ありません。ただ、伸びようとして曲がった分、製材して板や柱にするとおそらく反るかと思います。梁にはちょうどいいです。
―というと。
反って伸びようとする方を下側にすることで、上からの荷重に強くなるんですよ。
―縦に波状のしわがありますね?
少し絞り丸太(※)のような感じになってます。あまり見ないですね。
※表面に波状のしわが現れた丸太。絞り丸太は、親木からDNAを受け継いだ天然のものと、立木に添え木を当てて作る人造のものの2種があるが、いずれも珍しい
―色も濃い部分と薄い部分があるようにです…
濃い方が谷側で、まっすぐ上に伸びようとする力がかかった部分なんです。色にも現れるんですね、面白い。
―6年間乾燥させてるんですか?
そうです。もう、完全に乾いてます。
―これ以上は割れないですか?
室内で空調がかなり効いてるようなところだと、もう少し割れが広がるかもしれないですが、そうじゃない限り大丈夫でしょう。
■素材データ
サイズ:長さ:4000mm、直径:140mm
樹種:ヒノキ
状態:樹皮剥き、乾燥
伐採時期:2017年
重量:30kg
(取材後記)
100回やって思うことは、一見、なんでもないものでも人によってはお宝かもしれないということ。実用、非実用という分け方も人それぞれ。こういうことを全部ひっくるめて“まるごと”なんですね。あと、週刊の頃はヘンテコ素材が夢に出てきたことも(木田)。
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この日記を書いた人
木田 正人
木田 正人
1966年生まれ。青森県弘前市出身。日本大学農獣医学部卒。雑誌記者など出版界勤務後、「人のため、地球のための仕事」をしたいと思い、林業を志す。東京チェンソーズ設立当初から森林整備と広報を担当。