2022.06.28
第70回 ”走り出しそう”な根株
社有林での作業道づくりの現場から運び出された根株。木目の流れ、色とも、まるで筋肉のようです。そしてこの姿、まるでいまにも走り出しそう。
マテリアル販売事業部・吉田に聞きました。
―根株ですね。どういうモノなんですか?
見たまま。自立してます。そして、いまにも走り出しそうじゃないですか 笑
―たしかに。大きく1歩踏み出してます。
ほんと、このまま行っちゃいそうですよね。
ー自立する根株は珍しいんですか?
いや、たまにあるんですが、この形はあまり…
―木目の流れも前のめりで、全体が流れてて、急いでる感じが出てます。
何か所かカットした枝があるのも、疾走感を表現したとしか思えない 笑
―ヒゲ根が少ないのもスピード感を出してます。
たしかにヒゲ根少ないですね。
―根株はやはりこのシワシワと光沢が魅力ですね。
そうなんです。でもその特徴も、今日は筋肉に見えます。
―なるほど。でも、木にとっては筋肉ですよね。この部分を発達させて、倒れないようにしてる。
倒木を見て、筋肉疲労なんていうことありますが、本当にそうなんですね。シワシワなのも筋肉と一緒で、繊維が伸縮してシワになってる。
―大きな身体を何十年も支えた証ですよね。
そうです。
―色も筋肉っぽい。
ええ、まさに生き物です。
―根どうしが繋がってるところもおもしろいですね。
初めは細いヒゲ根から始まって、1年ずつ大きく成長するんですが、その何処かの過程で繋がるんですよ。
―すごいことですよね。
ここはくっついた方が強度が出るとか、そういう判断があるんでしょうね。
―社有林の木ですか?
そうです。
―けっこう斜面に立ってたんでしょうか?
そうかもしれないです。何本も根が出てる方が谷側で、倒れないように張ってたんでしょうね。
―樹齢は?
60〜70年生ですね。
―ところで、根株はどういうふうに使われることが多いですか?
ディスプレーとしてこのままの形で使うことが多いです。あとは、テーブルの台座になったり…
カッティングボードに加工することもあります。
―形状や木目を活かしてですね。
木目が模様として面白いとおっしゃる方、多いです。
■素材データ
サイズ:高さ:1400mm、根の広がり:1300mm〜2100mm
状態:樹皮剥き
樹種:ヒノキ
伐採時期:2022年2月
重量:80kg
(取材後記)
木々は根を通じてお互いコミュニケーションを取っているという学説があります。
根株が大好きな吉田、あるデザイナーさんをご案内した際、この話をしたそうです。そうすると、デザイナーさんが“ネットワーク”だねと。それ以来、ネットワークとしか見えなくなったそうです木田)。
この日記を書いた人
木田 正人
木田 正人
1966年生まれ。青森県弘前市出身。日本大学農獣医学部卒。雑誌記者など出版界勤務後、「人のため、地球のための仕事」をしたいと思い、林業を志す。東京チェンソーズ設立当初から森林整備と広報を担当。