2022.07.05
第71回 木目が揺れる! 老齢木の秘密
樹齢160年を超えるスギの大木から挽いた板。老齢木が作り出す、揺れる木目が魅力です。でも、なんで老齢木が?
マテリアル販売事業部の吉田に聞きました。
―これは何の板ですか?
スギです。ニュースレターの2回目(2021年1月)で取り上げたテーブル状の巨大根株と同じ木です。
―あ、青梅の成木の御神木!
そうです、そうです。
―たしか台風で倒れてたんですよね?
2018年の台風被害で倒れた木ですね。
―それを山から引き出してきて、1番根元に近かった部分がテーブル根株に…
その上は丸太で出荷して、さらにその上を製材したのがこの板です。
―けっこう先っぽですか?
高さ40mくらいあった木なので、真ん中あたりですかね。
―すごい年輪が詰まってますね?
そうなんです。ふつうの板と比べて、めちゃくちゃ詰まってます。
で、その詰まった年輪がおもしろい木目の模様を作ってる。
―そうですね。揺れのある線模様もあれば、円になってるのもあるし…
(工房の関谷にも聞いてみました)
―木目の模様が複雑になるのは何故?
その木が生きて行くに当たって、そう成長する必要があったんです。
―というと…
太陽の光が当たらない、傷が付いた、などがあったときに、体を曲げたり、ひねったり、こぶになったりして成長してきたんです。
―なるほど。その動きが木目に現れてる。
長く生きてる分、老齢木はそういう外的要因に晒されることが多く、複雑な木目になりやすいですね。
―そうなんですね…
あと、自分の重みで形を変えるということもあると思います。
―なるほど…
複雑な木目となることで強くなるんです。
―そうなんですか?
紙も折ると強くなるじゃないですか? 1枚のペラペラよりも…
それと同じで、木目を複雑にして、強度を出して、重みに耐えてる。
―ところで、こういう板はどういうところに使ったりするんですか?
天井とか、建具ですかね…、家具を作るにしても、その一部に使ったり…
こういう木目の模様を“杢”(もく)といって、建築のアクセントとして使うんです。檜原の神社でも部材の一部に杢の出た板を使ってたりしてますよ。
ーそうでしたか…
気付く人だけ気付くみたいな…。昔の職人の“遊び”ですね。
■素材データ
サイズ:幅4,000mm、奥行き125mm、高さ約35mm
状態:樹皮剥き、乾燥
材種:スギ
伐採時期:2018年秋
重量:5kg
(取材後記)
長く生きた証として、味のある木目が出るなんて、人間のシワと同じですね…。先日、青梅の現場を久しぶりに訪れ、切り株を見てきました。夏草に埋もれ、苔も出て、いい感じでしたよ。ちなみに、テーブル根株の方は、いまも天然乾燥中。
最後にお知らせです。
2021年1月の開始から毎週配信してきた「1本まるごとニュースレター」。今回で71回目となりますが、最近は締め切りに追われ、夢にまで出てくる始末。これでは続かないな〜、持続できないな〜、全然サステナブルでないな〜と、気付きました…
ニュースレターを続けるためにも、ここで1か月くらいお休みをいただき、新たな気持ちで再スタートできればと考えております。毎週の配信を楽しみにしてくださってる皆様には大変心苦しいですが、何卒よろしくお願いいたします(木田)。
この日記を書いた人
木田 正人
木田 正人
1966年生まれ。青森県弘前市出身。日本大学農獣医学部卒。雑誌記者など出版界勤務後、「人のため、地球のための仕事」をしたいと思い、林業を志す。東京チェンソーズ設立当初から森林整備と広報を担当。