2022.10.25
第77回 小径丸太を活かした香りのアイテム/事例紹介
これという使い道がなく、間伐で伐ったあとも、山から出されないことが普通だった小径丸太。
その小径丸太を使い、丸太の形をそのまま活かした香りのアイテム、「ウッドディフューザー リン」。
商品の企画に携わったアットアロマ株式会社の千葉正貴さん、寺岡由貴さんにお聞きしました。
―商品について改めて教えてください。
「リン」は自然蒸散型というタイプになりまして、電気や機械を使わない、表面に垂らしたオイルが、自然に揮発していくというタイプのディフューザーになります。
―東京の木を使うことにしたきっかけは何でしょう?
香りを作る中でデザイン性はもちろんですが、地域性というストーリーがとても重要なことになってくるんです。アットアロマは東京の会社なので、東京の木を使いたいと思いました。
―木という素材にどのような効果を期待してるんですか?
木や植物には、インテリア性もあるんですが、癒しの効果もあると思うんです。そういった部分で木のディフューザーはみなさんを癒す効果があるんじゃないかなと思いました。
―そうなんですね。丸太そのものの形を活かしたのはなぜですか?
木が持つひとつひとつの個性、年輪の模様や節のあるなしなど、その面白さや価値が輪切りだとより引き立つのかなと思いました。
―天然の木には節がある、ヤニが出る、色味が違う、割れが入る、など特性があります…
それこそ個性で一番面白いところなんですが、逆に言うと一番苦労した、難しいと感じたところでもあります。社内でも「この割れはいいのか」とか、「ヤニが出ているがいいのか」など、いろいろ意見が出ました。
―どう対応されたんですか?
実際に檜原村へ行ってチェンソーズさんのお話を伺い資料を作り、社内の説明会で話しました。
―どんな話をされたんですか?
デザイン面の話はもちろんなんですが、小径丸太は使い道がないなど、材料が取れた林業側の背景だったりも混じえて、だから、この形で出してますということを説明しました。
―そういったことを経て、販売が開始されたんですね。
ええ。とはいえ、初めの頃は節が大きすぎる、ヤニ出てる、というような理由で店頭から外すこともあったんですが、いざ蓋を開けてみると、逆にヤニが出てるものを選ばれる方もいて…。そういうものこそ個性的でかっこいい、とおっしゃってくれるんですね。
―店頭では節やヤニについても説明してるんですか?
なぜ節があるのか、ヤニが出るのか、ヤニの成分や香りが防虫や防カビにも効果があることも伝えています。
―どんな方が買われてるんですか?
通常より若い方が多いようですね。アットアロマは30代、40代がメインなんですけど、20代の比率が高いのがこの商品の特徴ですね。
デザインの面もありますし、サステナブルに関する感度が高いのかなと思います。
―檜原の山にも来られたということですが、いかがでしたか?
実際使うのはこのサイズの丸太だけなので、全然想像がついてなかったですが、いろんな木の種類、いろんなサイズのものがあって驚きました。
―なるほど。
工房にも行きましたので、山の木が製品になって行く過程を見ることができて、林業という仕事について、少しですが実感できました。
そこで感じたことが商品の説明だったり、表には出てない商品説明の裏側に生きてきたのかなと思います。
※ ウッドディフューザーリンについてはこちら
■素材データ
サイズ:直径:85mm内外、厚み:19mm内外
状態:樹皮剥き、乾燥
樹種:スギ・ヒノキ
伐採時期:2020年3月
(取材後記)
本文では触れられなかったですが、こんな素敵なお話も聞きました。誕生日プレゼントに、「リン」の年輪を数えて購入されたお客様がいられたそうです。木も同じ生き物なんですよね。改めて(木田)。
この日記を書いた人
木田 正人
木田 正人
1966年生まれ。青森県弘前市出身。日本大学農獣医学部卒。雑誌記者など出版界勤務後、「人のため、地球のための仕事」をしたいと思い、林業を志す。東京チェンソーズ設立当初から森林整備と広報を担当。