2021.07.06
第24回 防風林のツバキ
檜原村・湯久保。山の上のこじんまりした集落にあったツバキの木。地域を守る防風林だったそうです。よーく見ると小枝が切り取られているようで…
マテリアル販売事業部・吉田に聞きました(吉田も湯久保の住人です)。
―何の木ですか?
ツバキです。
まず、この木がどこから来たかをいうと、私の住んでいる集落・湯久保(檜原村)なんですね。
―はい。
そこのあるお家の、その段下に木がいっぱい植わっていて、防風林みたいなかんじになってるんです。
―防風林があるんですか?
ほとんどの家にあります。聞いたら、昔の家は石の上に乗っているだけだったから、庇が長いと下からの強い風で家が持ち上がってしまうんだ、とのことでした。
―山の上だから、風強いですか?
ほんとに強い風が来たときは守るものがないからと、いうことでしょうね。縁側の前にあって、下からくる風を防ぐのに必要なんです。
―どこの家にも防風林があるんですか?
はい。その家だけじゃないですよ。ないのはうちくらい 笑
―ツバキを防風林にしてるんですか?
スギやケヤキもあるんですが、ツバキもあって…
そんな大きなサイズじゃないですけど色々な樹種が混ざっていまして、で、何年かに1回、混んで暗くなっちゃうから、剪定や間伐をしている中で出て来たツバキです。
よく見ると、枝を切ってあるの分かります? 葉落としをしてるんですね。
―なぜ葉っぱを落としてるんですか?
使ってるんですね、そのお宅が。さて、問題です。何に使ってるでしょう?
―おっと 笑
(いろいろ答えるが…)
違います。染め物に使ってます。葉っぱを燃やして、灰にして、焙煎液として使ってます。
草木染めで紫や藍を染めるとき、定着させるために焙煎液に入れるんですが、灰を水と混ぜて、その焙煎液にするんです。
―ツバキ葉の灰はそれに向いてるんですか?
アルカリ成分が多く染色に適してるそうです。
染色家の方を招いてワークショップをやったりしてるんですが、ツバキ灰があるなら安心だとお話しされてるそうで…
それに、ツバキ灰はすごく貴重だとも。灰にすると、量が葉っぱの1/100くらいになるそうです。
―灰に適した時期ってあるんですか?
6月終わりの若葉のころがいいようです。
―そういう木なんですね。
そのようにして、葉っぱが取られたものを、枝は使わないからと、譲っていただきました。
―樹皮、白いですね。
そうなんです。もし、白い枝を探してる方がいましたら…、それと、ツバキってけっこう硬いんですよ。細いですけど、幹の部分はしっかりしていて、重みもあります。
―ツバキを扱うのは初めて?
在庫は初めてですね。
▪︎素材データ
サイズ:高さ:3000mm、2800mm、直径:40mm
状態:樹皮付き
樹種:ツバキ
伐採時期:2021年3月
重量:2kg
(取材後記)
山にツバキはけっこうあって、そのせいかあまり注目してこなかったのですが…。その土地の木というのは、そこの暮らしに結びついてるんですね。
こちらがツバキの灰を使った焙煎液で染めたムラサキの和紙です(木田)。
この日記を書いた人
木田 正人
木田 正人
1966年生まれ。青森県弘前市出身。日本大学農獣医学部卒。雑誌記者など出版界勤務後、「人のため、地球のための仕事」をしたいと思い、林業を志す。東京チェンソーズ設立当初から森林整備と広報を担当。