2021.08.24
第30回 根張りが残った奇跡(?)の”たんころ”
木の根元付近の太くなっている部分を根張りといいます。根張りは伐採やその後の作業のさいに切り落とされることが普通なので、このように残っているのは珍しいそう。
マテリアル販売事業部・伏見に聞きました。
―しわしわ、すごいですね。何の木ですか?
スギの丸太で、その地際部分ですね。
ふつうは伐採するときに、このしわしわの根張りを落とすんですけど、それが奇跡的に落とされずに丸太として出てきたものです。
―このかんじは立木のときも見えてたんですか?
ここまで顕著にはたぶん出てなかったはず。ただ、しわが寄ってるのは分かったと思います。
―何かすごそうだ感じて根張りを残したんでしょうか?
意図的に残したかな? どうだろう…意図的ではなかったと思いますよ。たまたま…
いろんなタイミングで落とされることを免れて、ここまで残ったんですね。伐採のとき、トラックに積むとき、市場に出すとき…いろんな場面で切られてもおかしくなかった。
―運がいい。
そうですね、うちにある在庫でここまで根張りがあるのは珍しいですよ。
―どういう場所にあった木なんでしょう?
おそらく、こっちの広がってるほうが谷側で、崖際みたいなところにあったんじゃないですか。谷側に重心があって、そっちに行こうとする力を支えて根張りが発達したようです。
このしわしわは筋肉疲労ですね。
―芯が黒いのは?
黒芯は含水量が多いからなるんですよね。乾燥したら抜けていくはずです。
―見どころはどこですか?
ここの根張りとふつうの部分の境界。木の組織が違ってるかんじで、面白いです。
―根張りはやはり独特の魅力がありますね。
やはりこのゆらぎ。それから、底に見える年輪の幅。
―これも樹皮は水圧で剥いたんですか?
ほかと同じ。水圧で剥いて、たわしがけです。
■素材データ
サイズ:高さ:700mm、径:350mm
樹種:スギ
状態:樹皮剥き
伐採時期:2020年1月
重量:30kg
(取材後記)
いろんな場面をくぐり抜けてきたんですね、この根張り。
ところで、このしわしわ、手触りも抜群に心地良いです。ぜひ、触ってほしい(木田)。
この日記を書いた人
木田 正人
木田 正人
1966年生まれ。青森県弘前市出身。日本大学農獣医学部卒。雑誌記者など出版界勤務後、「人のため、地球のための仕事」をしたいと思い、林業を志す。東京チェンソーズ設立当初から森林整備と広報を担当。